講堂の価値について
旧山形師範学校講堂の建造物(近代・学校施設)としての価値についてまとめました。
師範学校で、独立した「講堂」として現存するのは唯一ここだけである
・師範学校で国重文指定を受けているのはわずかに2棟のみ
(旧山形師範本館と旧奈良女子高等師範学校〈講堂は本館2階に〉)
-
本館と講堂の位置関係が建築当時のままで残る
-
明治28年の文部省「設計大要」に沿った造りが残っている(講堂兼音楽教室が独立した建造物、階段教室、天井高1:幅2:長3の割合、御真影奉掲所)
以下は、平成10年、県有形文化財指定(調書作成者は東北大学佐藤巧名誉教授)時の調書より抜粋
-
この講堂の切妻形飾り破風は、本館二階部両端の妻飾りの手法と同巧で、同年代、同一設計者の作品であることを示す。
-
桁行8間の特異な大スパン建築の架構を示し、また意匠的にも当時の折衷主義的手法が各所にみられ、本館の意匠とも同巧で、同一時期、同一意匠で統一された作品である。
-
手法も堅実、日本近代建築史上貴重な存在である。
-
既に国指定となっている本館ともども一体のものとして文化財に指定し、その保存と活用が計られるべきである。
以下は、平成13年、山形県教育委員会発行「山形県の近代化遺産ー山形県近代遺産総合調査報告書」の1旧山形師範学校講堂の稿(執筆者は東北芸術工科大学宮本長二郎教授)より抜粋
-
当講堂は国指定重要文化財の本館と同時代、同様式の建築であることは明らかであり、創建後の改造少なく当初形式を保ち、本館、正門、門衛所とともに、旧山形師範学校の遺構として保存活用すべきものと考える。
子のk道の
01
バルコニー
庇は切石製布基礎上に角柱土台建。間口42尺を5間に割付けて開放。両端2間に勾欄、両側面に3段の石階を設け、板敷きとする。柱上にモールディングを施した方斗と方杖で桁と両端の繋梁を受け、軒先に瓔珞(ようらく)を飾っています。
02
アーチ状唐草風意匠
東西妻面は一部アーチ状の曲線とした唐草風の意匠。
03
ハーフティンバー
東西妻面は屋根と壁面をスパッと直線的に切ったような切妻造りで装飾が施された切妻破風となっている。また、ハーフティンバーと呼ばれる洋風真壁造で、梁や柱といった軸組が外部に露出しており、その間の壁面を白漆喰塗で埋めて作られています。
04
ファンライト
正面出入口上部にはファンライトと呼ばれる半円形の欄間(アーチ窓)。ガラスが18枚組みこまれており、色彩はありませんが、建築当時は色彩豊かなステンドグラスだった可能性があります。本館正面のガラスと同様の作りです。
05
バージボード(軒板飾り)
銅板葺庇の下部軒周りにはバージボードと呼ばれる飾り付きの板を取り付けてあります。(瓔珞、ようらく)
06
持送り
西側面入口庇の持送りは本館・門衛所と同意匠。(持送り=庇や梁・棚・床などの突出を支える横材のこと)
07
上げ下げ窓
南北側面には各12か所(増築前は8か所)に上げ下げ窓が等間隔で配置。窓内部の窓枠の形状も本館と同意匠です。
08
洋風下見
外壁は長い板を横に張ってだんだんに重ねて張っていく下見張でペンキ塗りが施されている洋風下見と呼ばれる造りです。
09
格天井
天井は几帳面取りの大縁格子と小縁格子を交互に配った格天井を全面に張っています。(几帳面取り=木材の角を化粧仕上げにする面取りの一種)